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シャープさんさんの作品:第7回シャープさんの寸評恐れ入ります

風邪をひいていました、 @SHARP_JP です。みなさんはだいじょうぶですか。屈強とか筋肉といったワードには無縁の人生を送ってきたので、少なくとも自分の身体に過剰な自信はありません。どちらかというと、己は老体だと思い込む癖すらあります。腰も痛いし。重いし。性格的に腰が重いタイプなうえに、物理的にも腰が重い。つらい。きょうの寸評はあこがれの職業に向けて、重い腰を上げてみた作家さんのマンガです。なんだこのつなぎは。


【今回の寸評】イラストを描く仕事がしたくて就活した事(yuriika 著)


マンガに限らず、音楽でも映像でも文章でも、あらゆる表現の営みにおいて、どこからプロと呼べるのか問題は、よく話題になります。私もよくわからない。ただ少なくとも、インターネットのおかげで昔より「表現し世に問う」という敷居が圧倒的に下がったわけで、「その表現で生計が立つか」という従来の線引きは、そろそろ社会的なコンセンサスから後退してもいいんじゃないかな、とは思います。たぶんもう、食えないからプロじゃないわけでもないし、食えないから表現に奉仕していないわけでもない。


語弊があるかもしれませんが、作者のyuriikaさん自らがおっしゃるように、「小さい頃から好きで楽しいから趣味で描いてきた」という行為自体に、表現の優劣があるとは私には思えないのです。さらにいえば、圧倒的にたったひとり、ただ自分のためにしか描かない表現でも、その孤高の強度ゆえに、それはじゅうぶん他人を撃ち抜く可能性があると、私はまた思うのです。


ただし、「だれかの期待に応える」「だれかの期待を上回る」ように描くという行為には、うっすらプロのラインが見えるのではないか。ある人の表現に、期待を寄せる人が現れ、それに応えようと表現を重ね、いつしかその行為を応援したいと思う人が現れる。趣味に社会性が生まれるというと大げさかもしれないけど、自分だけの楽しみが、はからずも他者の期待を呼び寄せ、行きがかり上でも、その期待を越えようとがんばる。そういった変化が自身の中に現れた時、その人はプロという領域へ踏み出すのではないか。


そしてたぶん、プロの世界は思った以上に残酷で、そこへ踏み出す人はすぐに葛藤や困難に向き合うことになる。この作品で吐露される「本当になんて難しい事なんだろう」という壁に。表現する人にとって、他者から期待を寄せられるのは得がたい喜びだけど、期待のハードルはやすやすと上がっていく。たいへんな世界だ。


おそらくこの作品はこれからも続くはず(2話目も公開されてるので読んでほしい)ご本人にとって、会社所属のイラストレーターになれるかどうかは切実な問題だと重々承知ですが、私自身は作者のyuriikaさんが「本当になんて難しい事」にどうやって向き合っていくのか、それをそっと見守りたい。私はただの会社員だし、この世でもっともプロから遠い位置に暮らす人間です。ただそれでも「本当になんて難しい事」が本当に難しいだろうことは、痛いほど想像できる。3話目も4話目も描かれ、そしていつか、拍手しながら完結しますように。

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2019/9/11 コミチ オリジナル
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