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佐渡島 庸平(コルク代表)さんの作品:超特大ヒットする漫画のネタは、中国の知られざる古典にあり!?【大きな時代の流れを読む(1)】

コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、温めている漫画の企画を「おすそ分け」としてシェアするこの連載企画。


1月の企画の立て方のテーマは、「大きな時代の流れを読む」です。


絶対に揺るがない不可逆な時代の流れとは何かを考え、その流れにのることで作品を多くの人が読みたいと思うものに仕上げる。そんな「大きな時代の流れを読む」という企画の立て方で考えた、具体的な企画の題材を4つ紹介しています。


今回は、テーマである「大きな時代の流れを読む」の意味と、1つ目の企画である「中国の人達が楽しめるコンテンツをつくる」についてお届けします。


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揺るぎなく、不可逆なものとは何なのか?


佐渡島:今月の企画の立て方のテーマは「大きな時代の流れを読む」です。


僕は、漫画家や作家が作品を作る際には、“自分らしさ”というものを作品に出すことが重要だと思っています。なので、その時々の瞬間的な時代の空気感に作品を合わせにいくような企画の立て方はやめて欲しいと思っているんですね。


でも、世の中を見回した時に、揺るぎなく不可逆な大きな時代の流れを意識することは大切です。


さらに、その流れの中で“淀み”が生じている箇所があれば、ヒットに繋がる可能性がとても高いと考えています。


『ドラゴン桜』も、この淀みを発見したところから始まった企画でした。


当時は、週刊誌などで、「東大の価値が下がってきている」とよく報道されていたんです。東大卒より早慶卒の人の方が就職してからのパフォーマンスが高いだとか、東大に入ると就職がしづらいとか。


でも、実際には、報じられるほど、東大の価値が下がっているわけではなかったんです。明治以降150年間、東大の地位は揺るがなかった。そして、世界全体を見渡してみても、各国のトップと言われる大学は、ほぼ国立の大学なんです。それが、ここ5年、10年で揺らぐ可能性の方が圧倒的に低いわけです。東大が築いてきた地位はそう簡単に崩れないという大きな流れの中で、まさに淀みが生まれていました。


そう考えた時に、やっぱり東大は目指すべき場所であることを漫画で描くこと自体に価値がありますし、「やっぱり、東大はすごい」と時代の風向きが戻った時に、その流れにのって漫画が大ヒットになる可能性があるわけです。実際にドラゴン桜はそうでした。


『宇宙兄弟』も同じです。企画を立てていた当時は、宇宙をテーマにした記事って、ほとんどメディアで見かけなかったんです。むしろ、宇宙開発への予算は抑えた方が良いんじゃないかという議論があったり、産業としても危ぶまれていました。


でも、大きな視点で見ると、宇宙開発で人類が月に行くことって、いつの時代も確実にワクワクすることなんですよ。人間の宇宙への関心は絶対に尽きるはずがないと思っていたんです。


実際に、宇宙兄弟が連載開始して2年後くらいに日本で新しい宇宙飛行士の募集が始まり、新しい宇宙飛行士が生まれました。今では『スペースX』だったり、宇宙に関する様々なニュースが日々報道されていますよね。『宇宙兄弟』も大きな時代の流れにのって、大ヒットした作品と言えると思います。


もしかすると、“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェットの株の買い方の考えに近いのかもしれません。彼はカミソリ会社の大株主になっていますが、その理由はどんなに技術が発展しても、ヒゲを剃る人は絶対にいるからカミソリの会社は安泰であろうという考え方に基づいています。バフェットも、トレンドに流されず、長期的な視野を持つことが大切だとよく言います。


絶対に変わらないであろうという、大きな時代の流れを読みながら、企画を考えることは、すごく重要です。そして、そこに淀みが生まれていたら、大きなチャンスかもしれません。


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中国の古典を、どうリメイクするか?


佐渡島:ということで、「大きな時代の流れを読む」というテーマで、今月は4つの企画を話します。


初回となる今回は、一番わかりやすい大きな時代の流れを紹介します。


それは「中国の人達が楽しめるコンテンツをつくる」ということが、これから大ヒット漫画を生み出す可能性が高いということです。


人口が多く、中流層が増え続ける中国の人達が、コンテンツにますますお金を払うようになるというのは、どう考えても絶対的な流れです。なので、中国の人達が楽しめるコンテンツを作ることができれば、市場が圧倒的に広いので、特大級の大ヒット作品に繋がる可能性が高いわけですね。


そのなかでも、僕は中国の古典を描いた作品に魅力をすごく感じています


例えば、『三国志』や『西遊記』などの中国の古典は、これまでに何度もリメイクをされるほど、人気があります。そして、中国の古典や歴史が舞台の作品って、日本人にもすごく人気がありますよね。最近の『キングダム』の流行りを見ていても、そう感じます。


僕は、今の時代、全く新しい物語をつくることだけではなく、過去の作品をどうリメイクするのかが非常に重要だと思っています。そこでいうと、中国の古典ってリメイクをする対象としてすごく魅力的なんです。


そう考えた時に、中国人にとって「知ってるようで、知らなかった」という古典を探して、それを漫画化すれば、中国人にも、日本人にも、大ヒットする作品がつくれるかもしれません。


僕は、僕らの知らない素晴らしい中国の古典が、まだまだ沢山眠っているはずだと思っています。


「中国は日本から色々とパクる」みたいなことを言う人がいますが、長い歴史から見たら、中国から日本が学んでいることのほうが圧倒的に多いわけです。昔から、中国から日本にきた渡来人などが、日本の政治も文化もリードをしてきました。


このように、中国の人達のコンテンツをつくる力というのは、素晴らしいものがあるので、きっと今の時代に生きている人でも夢中になる古典が沢山眠っているはずです。しかも、それを掘り当てた時は、日本人も、中国人も楽しめる超特大級のヒット作品になる可能性が高いわけです。



ということで、「大きな時代の流れを読む」という企画の考え方の1回目は、絶対に不可逆な流れということで、「中国の人達が楽しめるコンテンツを作る」を紹介しました。


中国の古典の山に宝があるかもしれないということで、それを探しにいってもらえればと思います。また、「こんな面白い中国の古典があるよ」とご存知の方がいたら、是非教えて欲しいですし、その漫画化にチャレンジしていただけると嬉しいです。



 聞き手・構成/井手桂司@kei4ide &コルクラボライターチーム

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