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コルクBooks公式のお題:みんなの企画
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#みんなの企画

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3日前更新 コルクBooks公式

みんなのマンガ企画を投稿しよう!

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コラム
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僕は元来エンジニアなのですが、コルクBooksを運営で必要に迫られ、本や映画のエンタメ、プロ編集者に聞いたりして、編集技術についてたくさん勉強しました。

その中から今回は新人編集者なら読んでおくべき本を紹介したい。

GW中の読書に選んでもらったら嬉しいです。


<業界編>

仕事するとき・就職するとき・新しい事業をやるとき、いつでもそうですが、まずは業界を知ることが大事ですよね。

業界の現状を知らないと、未来の一手は打てません。

まずは業界の歴史を知り、編集者というのがどういう仕事を知りましょう。


(1)はじめての編集(菅付雅信 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4903951480/?tag=corkbooks-22

編集とはどういう仕事なのか?というのがよくわかる本です。

表紙に、「編集は企画を立て、人を集め、モノを作るために、言葉とイメージとデザインをアンサンブルすること。メソポタミア文明の壁画からレディー・ガガのfacebook、マクルーハンからIKEAのトリセツまで、編集の仕組みと魅力を解き明かす21世紀の編集入門書」とある。

まさに、業界がよく分かる本だ。


(2)さらば、わが青春の「少年ジャンプ」(西村 繁男 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4877285253?tag=corkbooks-22

マンガ雑誌といえば、やっぱり「少年ジャンプ」。

「少年マガジン」や「少年サンデー」など強い競合がいる中、どうやってジャンプが業界No1の位置まで上り詰めたのかがよくわかるマンガ編集者必読の書。


(3)マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?(飯田 一史 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4065123879?tag=corkbooks-22

マンガアプリが沢山出現し、電子書籍市場が伸び、海外ウェブトゥーンが伸びる中、マンガはどうなっていくのか?

その現状認識と、日本のマンガ業界の危機がわかる良書。



<ディレクション編>

マンガ編集者は、マンガ作りをやりたくて、マンガ編集者になった人が多いだろう。

そういう意味で、漫画家の気持ちになって、マンガ作りをするためには何を考えればよいのか?というのは大事だ。

マンガ作りでよく言われるのは、キャラ立てする、面白い企画などなどだが、まずは下記の本を読むといいだろう。

ちなみにコルクBooksでは、マンガづくりに必要な要素を

・主人公のキャラ

・関係性

・演出力

・ストーリーテリング

・画力

・コラボ力

の6つに分けて考えている。

↓詳しくはこちら。

https://corkbooks.com/stories/pop


(4)マンガの描き方(手塚 治虫 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/4334722636?tag=corkbooks-22

やっぱり、手塚治虫先生は偉大だ。

新人漫画家にマンガの描き方の本をおすすめするなら、やっぱりこれからだろう。


(5)荒木飛呂彦の漫画術(荒木飛呂彦 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/B012MLQ9SG/?tag=corkbooks-22

少年系のマンガを描くのであれば、まずはこれではないか?

荒木先生は、マンガの基本構造を

キャラクター・ストーリー・世界観・テーマの4つであると言い切っている。

これは、全てのジャンルのマンガにとってそのとおりであり、

あとは、少年系だと主役の成長、少女系だと男女の関係性、青年系だと日常の関係性などちょっとずつ重要度が変わってくるのではないだろうか。


(6)小池一夫のキャラクター創造論(小池一夫 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/B01KUW2A4G/?tag=corkbooks-22

やっぱりマンガはキャラが大事だ。

魅力的なキャラを作れるか?が、マンガづくりの全てだ。

キャラクター作りを考えるとき、小池先生のこの本はすごく参考になる。


ドラゴン桜の三田先生は、

『人間の魅力とは、表と裏、光と影、強みと弱みがありますよね。

漫画家は「かっこいいキャラ」とは何か?を作り込めるかです。』

と仰っていた。

確かに桜木建二は圧倒的に魅力的なキャラだ!

僕はいつもこのコトを考えながら編集を行う。


(7)ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 ― The Illusion of Life ― (フランク・トーマス (著), オーリー・ジョンストン (著), 高畑 勲 (編集))

https://www.amazon.co.jp/dp/4198615004?tag=corkbooks-22

漫画家や編集者と話していると、映画好きは多い。

ハリウッドでは複数人で創作することが当たり前で、監督・プロデューサー・脚本家・アニメーターなど分業している。

ディズニーの創作の全てがわかるし、監修が高畑勲というすごい本だ。

例えば、高畑勲の翻訳だと、

Real・Realistic・Believableの違いについて説明されている。

創作物、つまりアニメ・マンガはBelievable、つまり、信じられる、本物と思える、作り物とは思えないという状況を創り出すことが必要だ。


<プロデュース編>

編集者の重要な仕事に、創作物を最大限に売るという責務がある。

作家が創った創作物をどううるか?

また漫画家のファン作りをどうするのか?はこれからの編集者にとってとても重要だ。

そういう意味で、コミュニティを作るということを学ぶことが、

これからの編集者にとって重要ではないか?という意味で下記の本を紹介したい。


(8)インターネット的(糸井重里)

https://www.amazon.co.jp/dp/B00799SLAG/?tag=corkbooks-22

いまからのプロデュースはインターネットを抜きには考えられない。

そして、そしてインターネットとは何か?を考えるとき、この本を抜きは考えられない。

インターネットとは、「リンク・フラット・シェア」なのだ。

まずはこの本を読まないと、コミュニティプロデュースは始まらない。


(9)グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ(デイヴィッド・ミーアマン・スコット 著, ブライアン・ハリガン 著, 糸井重里 監修)

https://www.amazon.co.jp/dp/4822248526/?tag=corkbooks-22

皆さん、グレイトフル・デッドというアーティストをご存知だろうか?

ビートルズより、ローリング・ストーンズより儲けてしまったバンドとして有名で、

現代のアーティストはすべてグレイトフル・デッドを勉強していると言われている。

その真髄はファンコミュニティを作るということなのだ。

フリーミアムを実践し、チームを作り、ファンを巻き込む。

それがグレイトフル・デッド流である。

マンガ業界にも本当に参考になる。


(10)ファンベース(佐藤尚之 著)

https://www.amazon.co.jp/dp/B079JRSVVQ/?tag=corkbooks-22

それでは、どうやったファンコミュニティを作るのか?

そう考えたとき、重要なのはファンベースにすることだ。

ファンベースの基本的な考え方は、

「共感」から「熱狂」へ

「愛着」から「無二」へ、

「信頼」から「応援」へ

だ。

これからの編集者はこれを考えるべきなのだ。



以上の10冊が新人編集者に必要な本だと僕は考える。

この10冊の本をベースにコルクBooksでは、新人編集のための勉強会を実施しようと考えています!

もし興味ありましたら、DM頂けたら嬉しいです。


最後にコルクBooksでは、編集インターン生やエンジニアの仲間を募集しています。

一緒に漫画家コミュニティを育て、MANGAをグローバルなエンタメにしていきたい人はぜひご連絡ください!

https://www.indeedjobs.com/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%AFbooks/_hl/ja


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3日前
グレイトフルデッドの本は気持ちいい本でした!
他の本も面白そうですね!
読んでみます!

3日前

ありがとうこざいます!
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物語を魅力的と読者が感じるかは、主人公や登場人物のキャラクター次第。


では、どうすれば魅力的なキャラを描くことができるのでしょうか?


今月は「魅力的なキャラクターをつくる」をテーマに、キャラクターの魅力を引き立たせるために考えたい4つのポイントを紹介します。


3週目となる今回は、「目標を明確にする」についてお届けします。


***


目標や、目標への姿勢で、キャラクターの人柄が伝わる。


(以下、佐渡島さん)


繰り返しになりますが、キャラクターが立つとは、その人物の輪郭が明確になることです。


キャラクターの性格や人柄を読者が理解し、「こういう時。このキャラクターなら、きっとこんな行動をとるんじゃないか?」と、読者が予想できる状態になっていることを目指す必要があります。


そこで、今回紹介するポイントはこちら。


“キャラクターが、どんな目標を立ているのかを明確にしよう”


例えば、宇宙兄弟のムッタであれば、第1話の段階で、30歳を超えても宇宙飛行士の夢を諦めきれなくて、宇宙に行く目標を胸のうちに秘めていることが明確に描かれています。


登場人物をわかりやすく伝えるために、その人物がどんな目標を持っているのかを、早い段階で読者に明確に示してあげることは大切です。


目標や、目標への姿勢で、人物の人柄が読者に伝わります。


ムッタであれば、30歳という年齢になっても宇宙飛行士の夢を秘めていることから、宇宙飛行士への憧れが人並み以上に高いことがわかります。同時に、宇宙飛行士の試験すら受けていない事実や、夢から逃げている言い訳を並べていることから、自分に対して自信を持っていない性格であることもわかります。


また、目標については、宇宙飛行士のような壮大な夢でなくても構いません。


クラスで全く目立たない主人公が、クラスのアイドル的な存在の女の子に声をかけること。パワハラが横行し、残業ばかりの職場にいる主人公が、勇気をだして上司に「今日は定時に帰ります」と申し出ること。どちらも立派な目標です。


まずは、キャラクターをわかりやすく伝えるために、どんな目標を持っている人物なのかを、読者に提示しましょう。



困難に陥った時こそ、その人の本質が現れる


また、長期連載のマンガの場合、連載の途中でキャラクターの魅力をもっと引き出したいと思うことがあります。


そういう時にオススメなふたつのやり方があります。


ひとつは、困難な状況にキャラクターを落とし込むということ。


『宇宙兄弟』でいうと、初めの頃、ヒビトのキャラクターが弱いという課題がありました。物語の序盤でムッタを宇宙飛行士の夢へと引っ張っていくヒビトですが、何事も完璧すぎて、ヒビトがどういう人間なのかわかりづらかった。


そこで、ヒビトが月に滞在している時に、月面の巨大なクレーターに落ちるという大きなトラブルにあえて遭遇させてみました。そこから、ヒビトがどういう風に生還するのかで、ヒビトのキャラクターがわかるだろうと思ったからです。


その後にも、ヒビトには、パニック障害が発生したり、NASAで厳しい処遇に受けたりと、困難が続きます。


しかし、そういった困難に対するヒビトの振る舞い方をみて、ヒビトがどういう人間なのかが明確になってきました。


「苦しい時に支えてくれた人こそ、本当の友達だ」みたいなことをよく言いますが、困難に陥った時こそ、その人の本質が現れると思います。


このキャラクターは、どういう人間なのかを際立たせたいという時には、困難な状況にあえて落とし込むというのは、テクニックのひとつとしてオススメです。


そして、もうひとつは、ライバルを登場させるということです。


困難に落とし込むと考え方は一緒です。存在を脅かすような存在や、「こいつには、負けたくない」と強く思う存在を用意し、ライバルに対する立ち振る舞いで、その人物の人間性が見えてきます。


ライバルを次々と登場させるのは、マンガでよく見られる王道パターンですが、ライバルの登場で主人公の振る舞いに変化があったのかに注目して読むと勉強になると思います。


ライバルの登場で、主人公の人間性が深く理解できるようになったのだとしたら、ライバルの存在は物語において、とても効果的に働いたと言えるでしょう。


是非、キャラクターの魅力を引き出すために、困難な状況を与えることを意識的に試みてください。



聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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キャラクターが命。キャラがすべて


物語において、必ず言われることです。佐渡島さんも常々、「物語の圧倒的な魅了は登場するキャラによるもの」と言っています。


では、どうすれば、魅力的なキャラを描くことができるのでしょうか


そこで今月は、「魅力的なキャラクターをつくる」をテーマに、欠かせない4つの要素「主人公のリアクション」、「周囲からのリアクション」、「ライバル」、「欠点」について具体的に解説します。


今月の内容は実のところ、そのまま自己分析の方法論でもあります。どうすれば自身のtwitterで個を際立たせていけるのか。リアル社会も含めて、キャラづくりへの理解を深めていきます。


2週目となる今回は、キャラを魅力的にするための「周囲からのリアクション」についてお届けします。


***


本人のセリフだけではキャラは濃くならない


(以下、佐渡島さん)

今回は、「周囲からのリアクション」について。


キャラクターが立つとは、人としての輪郭が明確になることです。


明確にするための1つの方法が、輪郭の線をはっきりと太くする「本人を濃くする(=主人公のリアクション)」と前回説明しました。その対になるのが、「その人物の周囲を塗る」手法です。周りの人のリアクション(反応)によって、その人物がどんな性格か浮かび上がらせます


例えば、サッカーがものすごくうまい高校生を主人公にしたマンガを描いたとします。ストーリーの1コマ目で、「オレは、日本一サッカーがうまい高校生だ!」と本人に言わせたら、キャラは立つのでしょうか?


立ちません。こういった指摘を新人マンガ家にすると、「本人が日本一と言っているんだから、キャラが立っていますよね?」と不思議そうな顔をします。僕は、「本人が言っているだけで本当に信用できるの?」と返します。


読者は本人の言葉だけでは、この少年が本当のことを言っているのか、ただの妄想狂なのか判断できませんよね。


本当にサッカーがうまいのかどうかは、周囲のリアクションで説明できます。例えば、主人公の少年がグラウンドでサッカーをしていた。そこに偶然、日本サッカー協会の理事長が車で通りかかり、「ちょっと車を止めてくれ。あの子は誰だ!?」と驚嘆したとします。


サッカー協会の(サッカーに詳しいであろう)人間の言葉を受け取った読者は、「ずば抜けてサッカーがうまい少年なのだな!」と受け取りますよね。主人公のアクションに対する周囲のリアクションは、客観性を備えています。


人気マンガに2次創作物がたくさん生まれるワケ


「周囲のリアクション」は、「周囲との関係値」ともいえます。


物語とは、はじめから終わりまで登場人物が1人で面白いものはありません。物語の面白さは、主人公をはじめそれぞれの登場人物が、いろんな出来事や人とどういう関係値を結ぶかにかかっています。


例えば、アイドルグループ嵐。5人の関係値に、ものすごい興味があるわけですよね。


解散を控えた嵐が仮に、5人全員で「おつかれさま旅行」をした、とします。旅行の様子は、最初から最後まで隠し撮りされていたとします。


我々はその映像で何を見たいのか。5人がどこへ行ったか。何を見てどんな食事をしたのかではありません。圧倒的に知りたいのは、5人それぞれがどんな話をしたか。5人の関係性はどういうものだったのかではないでしょうか。


彼らの関係値はすでに多くの関心があるから、嵐はもはや何をしたって面白いともいえます。


人気マンガ作品に2次創作が起こるのも、同じ理屈です。


『SLAM DANK』の桜木花道と流川楓が同じオフィスで働いていたら? 製造部と営業部にいたら? そんな2次創作物が支持されるのは、ライバルである桜木と流川の関係値が共通認識としてあるから。2人の関係値自体は予想可能ななかで、舞台や時代、年齢など状況を変えて再生産したら、2人はどんな風にしゃべり、ぶつかるのか。読み手はそれを楽しむのです。


関係値を描こうと人物同士のエピソードを描くことで、自然と個々のキャラも立ちます。一方で、登場人物一人ひとりのキャラが明確に立っているから関係値が面白くなることもあります


「関係値を描くこと(周囲とのリアクション)」と「主人公のリアクション(本人のアクション&リアクション)」は、卵が先かニワトリが先かのような関係。両方を丁寧に描くことが必要なのです。


(翌週へ、続く)

聞き手・構成/平山ゆりの @hirayuri&コルクラボライターチーム


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キャラクターが命。キャラが物語のすべて。


マンガを描くときはもちろん、映画でもドラマでも、必ず語られることです。佐渡島さんも常々、「物語の圧倒的な魅了は登場するキャラによるもの」と言っています。


では、どうすれば、魅力的なキャラを描くことができるのでしょうか。


キャラが立っているとは、その人物がどんな人かを瞬間的に記憶できることだと、佐渡島さんは言います。


そのためには、「主人公のリアクション」、「周囲のリアクション」、「ライバル」、「欠点」の4つの要素を総合的に考えてキャラづくりをしていく必要があるとも。


そこで、今月は、「魅力的なキャラクターをつくる」をテーマに、その欠かせない4つの要素について具体的に解説します。


この内容は実のところ、そのまま自己分析の方法論でもあります。どうすれば自身のtwitterで個を際立たせていけるのか。リアル社会も含めて、キャラづくりへの理解を深めていきます。


1週目となる今回は、「好きになるキャラとは何か」。そのために必要なひとつ目、「主人公のリアクション」についてお届けします。


好きになるキャラは「先の行動を予想できる人」

(以下、佐渡島さん)

キャラを立てようとすると、新人マンガ家は子どもっぽいマンガ的演出をしたり、おおげさに描いたり、突飛な行動を繰り返すなど“変な人”にしてしまいがち。このやり方は、基本的には間違っています。


物語を通じてそのキャラを好きになっていくわけですが、変な人は簡単に好きになれません。変な人の言動はなかなか理解できないからです。「気持ちがよくわかる人」だから、好きになれる。本当に描くべきは、「常識外れでエッジが効いているのだけれど、本質を突いている人」です。


そのうえで、その人のことを瞬間的に知って記憶できること。これこそが、キャラが立っているといえます。


物語というのは、裏切られると楽しい。


『物語設定の“型”を理解する』でも説明しましたが、読み手が裏切られるためには、「次はこういう風なストーリーになるだろう」との予想が頭の中で成り立っている必要があります。


サスペンスの場合はあらすじで裏切るのに対し、「この人なら次こうするだろう」と“人”によって予想できることがキャラが立っているということ。「キャラで(先を)予想させる」ことが超重要なんですね。


というのは、「予想する行為」と「応援する行為」のために起きていることが似ているから。


物語の序盤、読み手の予想の仕方は、(この主人公、このあと負けるんだろうな~)などと大雑把です。それが何度も予想が繰り返されることで、(負けるかもしれないけれど勝ってほしい)(圧倒的に勝ってほしい)などと予想のあり方が具体的になっていきます


すると自然に、予想行為そのものが「応援している」形になる。キャラを応援するとは、物語を通じてその人を好きになっていることですよね。


AKB48グループのファンも、「予想→応援」の流れで拡大した例です。


そこで大きな役割を果たすのが、「総選挙」。


選挙において、投票する側や見ている側は自然と予想します。予想の内容を誰かに語る場合、「○○が当選すると思う。なぜなら……」と、その理由を自然と説明しますよね。


「この子が選抜メンバーになるよ。こういう魅力があるから!」「この子はこういうところがすごい!」と説明するうちにその子のことが好きになっていく


選挙自体は完全な物語ではないのだけれど、選挙を見ている側は個々のストーリーを自由に作っています。選挙は、インタラクティブな物語を生む仕組みとして最強なんです。


そんな風に「その人物によって先の展開が予想できる」ためには、キャラを際立たせることが欠かせません。キャラが立つとは、その人物の輪郭が明確になること。その方法を知って意識的に描くだけで、物語はずっと面白くなります。


言動を受けての反応(リアクション)がキャラを立たせる

(佐渡島さん)

キャラを魅力的にするためのひとつ目は、「主人公のリアクション」です。


主人公がある行動をします。そして、その行動や周囲の出来事に対して、リアクション(反応)をする。このときのリアクションがどういうものかで、キャラがわかります。


たとえば、主人公が会議に5分遅刻してきたとします。


あるキャラは、遅刻行為に対して、顔面蒼白でこんな風に謝りました。


「本当に申し訳ない!皆さんの時間を1人5分ずつ無駄にしてしまった。僕はなんてことをしてしまったんだ…」


このリアクションから、このキャラは普段遅刻をしない人だとわかりますよね。


一方、別のキャラはこう言いました。「今日は早かったな。興味がある内容だったらそんなに遅れないんだな」。


このリアクションから、その人はしょっちゅう遅刻することが読み取れます。


行為に対して、その人物がどんな風にリアクションするか。そににその人の資質がものすごく表れます。


遅刻することは、世間の常識では「悪」とされていますよね。新人の多くは、ある出来事に対して常識的な反応をさせがち。一般常識のまま、「遅刻した状況を描く」→「謝る」という行動をさせても、キャラは一切表れてきません。


同様に「浮気」。浮気する=「悪」と単純に描いてもキャラは立ちません。


浮気しているときの罪悪感の抱き方、浮気相手の女性への連絡の取り方……。そこにキャラが出ます。


「そんな浮気の方法があるのか!」と驚いた話があります。


ある男性は、30人の女性と同時に付き合っています。その付き合い方は、30人の女性に対して、常に同じLINEの内容を送るというもの。会話はほとんど交わしません。相手の返信を読む時間なんてないから自分の伝えたいことだけを送信し、「へぇ~そうなんだ!」などと30人に似たような返信をする。


そんな関係性を続け、自分が寂しくなったら「今夜空いている?」と順々に声をかけていく。そして、その夜空いている女性と一緒に過ごします。この流れを延々と繰り返していると教えてくれました。


この戦法に、男性のキャラがめちゃくちゃ出ていますよね。


出来事に対して常識的反応をさせている限り、キャラは立たないのです。


どんな出来事でもキャラは出せます。誰でも経験する「朝食」においても。何を食べようかというとき、コンビニに買いに行こう! それもセブンイレブンがいい人と、自分でごはんを炊く人。違いますよね。


前日の夜から用意する人ならば、そのシーン単体だけでなく「この人物は、何においてもすごく準備して望むのかな」と何事かを予想させることもできます。


すべてのシーン、すべての登場人物にしっかりリアクションさせていく。それによって、魅力的なキャラに育つわけです。


今回の話をより深く学ぶには、『マンガでわかる 本気で売れるためのヒロユキ流マンガ術』がオススメです。「主人公のアクション&リアクション」を軸にキャラを立たせることを徹底して教えてくれています。


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/平山ゆりの&コルクラボライターチーム

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どうやったら、オリジナリティのある企画を考えられるようになれるのか…?


この問いに対して、佐渡島さんは、型破りなオリジナリティを生み出すためには、定番の型を深く理解することが大切だと言います。


「いきなりゼロから新しいものを生み出そうとしても大抵うまくいかない。そもそも“型破り”というのは、読んで字の如く、型を破ること。型を抑えていない人は、永遠に型は破れない」


今月の『企画のおすそ分け』では、「物語設定の定番の型を深く理解する」をテーマに、幾つかの型をピックアップし、それぞれの型への理解を深めていきます


最終週となる今回は、定番の型のひとつである「ファンタジーもの」についてです。


***


最もマンガ家としての技量と気力が問われる型

(以下、佐渡島さん)


最終週の今回は、作品をつくるのが最も難しい型について話をします。


それは、ファンタジーものです。


ドラゴンボール、ワンピース、ナルト。異世界を扱う作品はマンガとして定番中の定番ですが、ファンタジーものはマンガ家の技量が最も問われます。


なぜなら、ファンタジーものを創作するには、物語の舞台となる世界をとても丁寧に作り込む必要があるからです。


その世界には、どんな種族がいて、どんな生き物がいるのか?

それぞれ、どんな肉体をして、どのような服を着ているのか?

どんな倫理観があって、善悪の判断はどうなっているのか?


マンガ家は、その世界の住人のように、全て詳しく話せるようにならないといけません。


宇宙兄弟の作者である小山さんも、ムッタたちが住んでいる近未来の世界が頭の中にアナザーワールドとして存在していて、まるで見てきたかのように話します。


そして、ファンタジーものであれば、僕たちがいる現実世界から一層遠く離れたアナザーワールドを構築しないといけません。


マンガ家は、自分が創造したアナザーワールドに読者を連れていくわけですが、そこが支離滅裂な世界になっていると、読者は混乱に陥ります。設定に矛盾を感じたり、先の展開が全く予想できないほど何でもアリになってしまうと、読者は物語についていけません。


そういったルールづくりも含めて、ファンタジーものは世界観の作り込みがものすごく重要なのです。


それが完成した後、やっと、どんな物語を描くのかという企画に入っていきます。ファンタジーの世界の中で、バディものを描くこともあれば、サスペンスをやるという選択肢もあります。


このように、他の型と比べて、ファンタジーものは創作することが本当に大変で、作家の技量と「描きたい」という気力が一番試される型なんです。


ただ、それでもファンタジーに挑戦する価値はあります。


その理由は、国境の壁を超えて、世界で親しまれる物語になりやすいからです。


ドラゴンボール、ナルトなど、海外で人気のある日本の作品は、ほとんどがファンタジーものです。ファンタジーは、その世界が緻密に設計されていれば、世界中の人が楽しむことができます。文化の差を超えやすい物語です。


そのため、マンガ家としての技量が上がってきたら、ファンタジーものに挑戦するというのは、とても価値ある挑戦だと僕は思います。その挑戦に備えて、今から頭の中でアナザーワールドの構築を始めるのもいいかもしれません。


世界中の人々を魅力的な世界に誘うファンタジー作品の登場を楽しみにしています。


様々な作品に触れて、型に対する理解を深めよう

(以下、佐渡島さん)


今月は、「物語設定の定番の型を深く理解する」をテーマに、バディもの、タイムスリップもの、サスペンスもの、ファンタジーもの、それぞれの型のポイントを話してきました。


最初の週にも伝えましたが、物語の魅力を大きく左右するポイントは、登場するキャラクターやエピソードです。


物語を創作するという長い歴史の中で、「こういう設定にすると、人間の心は動きやすい」という定番の型は既に出来上がっています。


新人のうちはベタでもいいから定番の型を使い、キャラクターやエピソードを磨くことに時間をかけたほうがいいと僕は思います。


定番の型の上に、オリジナリティのあるキャラクターやエピソードを重ねていくことで、型破りと呼ばれる作品に仕上がっていくのだと思います。


是非、世の中にある素晴らしいマンガや映画にどんどん触れて、物語の型に対する理解を深めていってください


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide&コルクラボライターチーム

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どうやったら、オリジナリティのある企画を考えられるようになれるのか…?


この問いに対して、佐渡島さんは、型破りなオリジナリティを生み出すためには、定番の型を深く理解することが大切だと言います。


「いきなりゼロから新しいものを生み出そうとしても大抵うまくいかない。そもそも“型破り”というのは、読んで字の如く、型を破ること。型を抑えていない人は、永遠に型は破れない」


今月の『企画のおすそ分け』では、「物語設定の定番の型を深く理解する」をテーマに、幾つかの型をピックアップし、それぞれの型への理解を深めていきます


3週目となる今回は、定番の型のひとつである「サスペンスもの」についてです。


***


サスペンスの要素を加えると、作品離れを防げる?


(以下、佐渡島さん)


今回、理解を深めたい定番の型は「サスペンスもの」です。


サスペンスとは、観客の心を宙吊りにするという意味です。読者に謎を提示し、その答えがわからない宙吊りの状態のまま物語が進行していきます。


謎に惹かれた読者は、答えを求めて作品をどんどん読み進めます。読者を宙吊りにすることによって、作品離れが起こりづらくするというのが、サスペンスの特徴のひとつです。


現在は、世の中で流通しているエンタメコンテンツが膨大にあり、読者の気持ちが移ろいやすい時代です。そのため、作品離れを防ぐ意味でも、様々なジャンルでサスペンスの要素が取り入れられているように見えます。


そんなサスペンスものの大前提として気をつけたいことは、余分な情報を作中に入れ過ぎないということです。


サスペンスを読む際、読者は作品に描かれている全ての情報が、謎を解くヒントや先の展開への伏線になっているかもしれないと思って読んでいます。


そのため、情報量が多すぎると、読者にかかる記憶の負荷が大きくなりすぎてしまう可能性があります。


この描写が魅力的だから描きたいと思ったとしても、謎解きに関係ないものであれば、多くを描き過ぎないことが大切です。



その謎は、読者が答えを知りたいと思うのだろうか?


(以下、佐渡島さん)


そして、サスペンスものの最大のポイントは、謎がどれだけ読者の興味を惹きつけられるかです。


例えば、作中で殺人が起きたからといって、読者にとって全く知らない人物の殺人事件では、読者が興味を持つことは難しいでしょう。物語の冒頭に、死体があったと言われても、それだけで話に関心を寄せることはできません。


サスペンスでは、謎解きのトリックが重要だと思われがちですが、「この謎の答えを知りたい」という謎への興味喚起が一番重要なのです。


宇宙兄弟のシーンを例に、説明しましょう。


JAXAの宇宙飛行士選抜試験において、閉鎖環境の施設内で、福田さんという登場人物が、試験において重要なアイテムであった時計を、他のメンバーには内緒で壊す場面があります。そして、福田さんが壊したことを主人公のムッタと読者だけが知っています。


ここで読者に提示した謎は「なぜ、福田さんは時計を壊したのか?」です。


この時、福田さんが犯人だと読者には伝えず、「閉鎖環境の施設内にいる5人のうち、時計を壊した犯人は誰か?」という犯人探しの謎解きにすることも、物語の演出としては可能です。


ですが、福田さんのキャラクターとしての魅力が既に作中に描かれていたので、「今回の試験に必死な想いを持っている福田さんが、なぜこんなことをしでかしたのか?」という謎のほうが、読者の興味を強く惹くだろうと思ったのです。


このように、謎を提示するにしても、謎の見せ方・演出次第で、読者の興味が全く変わってきます。


この謎は、読者の興味を強く惹くことができるのか?

どういう風に演出すると、答えが知りたくなる謎として読者に映るのか?


サスペンスを考える際には、この問いを常に頭の中で繰り返しながら、企画を立てていくことが大切です。


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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コラム
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どうやったら、オリジナリティのある企画を考えられるようになれるのか…?


この問いに対して、佐渡島さんは、型破りなオリジナリティを生み出すためには、定番の型を深く理解することが大切だと言います。


「いきなりゼロから新しいものを生み出そうとしても大抵うまくいかない。そもそも“型破り”というのは、読んで字の如く、型を破ること。型を抑えていない人は、永遠に型は破れない」


今月の『企画のおすそ分け』では、「物語設定の定番の型を深く理解する」をテーマに、幾つかの型をピックアップし、それぞれの型への理解を深めていきます。


2週目となる今回は、定番の型のひとつである「タイムスリップもの」についてです。


***


タイムスリップものと、スーパーパワーものは双子?


(以下、佐渡島さん)


今回、理解を深めたい定番の型は「タイムスリップもの」です。


主人公が過去の時代にタイムスリップする物語の型で、『JIN』、『ジパング』、『信長協奏曲』など、数多くの作品がこれまで誕生しています。


タイムスリップものは、主人公がスーパーパワー(超能力)を得る物語と、構造は基本同じです。


主人公が過去の時代に行くことで、周りがパワーを持っていない状態になり、持っている能力が際立つのがタイムスリップものです。『JIN』はその典型で、主人公だけが文明や知識を持っている。それにより、周囲から特別な存在だと見られます。


一方、スーパーパワーものは、周りの能力に変化はありませんが、主人公だけ何か特殊な能力を追加で得ることで、特別な存在となります。


ただ、タイムスリップの方が型の形が明確です。物語の前半にタイムスリップが発動し、主人公の存在により歴史を変えるかもしれない出来事が起こり、物語が帰結する。


また、スーパーパワーとなる能力の説明もいらないので、主人公が特別な存在であることが読者に理解されやすい


タイムスリップものと、スーパーパワーものは、双子のような関係の物語の構造になっていますが、タイムスリップの方が型として使いやすいかもしれません。


物語の法則を働かせるために、重要なこと。


(佐渡島さん)


タイムスリップものをやる時に、絶対に意識しないといけないことがひとつあります。


それは、「物語の中で、大きな嘘はひとつだけ」ということです。


面白い物語とは、読者が先の展開の予測ができる物語です。


「主人公は、このままだと、こうなるんじゃないか?」と予測をしながら読んでいるから、その予測を超えたり、予測を良い意味で裏切られたりするときに、面白みを読者は感じます。予測ができない限り、物語は絶対に面白くなりません。


そうした時に、タイムスリップという非現実的な出来事が起こる世界だからといって、何でもありにしてしまうと、読者は先の展開が予測できなくなってしまいます。


タイムスリップという大きな嘘(フィクション)を使ったなら、それ以外は嘘をつかずに、徹底的に現実に即した方が良い。そうすることで、物語の法則が働きます。


例えば、『JIN』でも、主人公が幕末にタイムスリップ以外に、すごい特別な能力を追加で得ることはありません。あくまで現代医療の範疇で、患者と向き合います。


『ジパング』でも、面白さを際立たせているのが、艦隊の大砲の数などがシビアに設定されていることです。制約のなかで、どうやりくりをするかが物語に深みを与えています。これが、未来とどこかで繋がっていて、大砲が打ち放題だったり、未来から援軍が呼べるような設定が入ったら、全然面白くなくなってしまう。


これは、タイムスリップものだけでなく、スーパーパワーものでも同様です。


物語の法則を働かせるために、大きな嘘はひとつだけにする。これがとても重要です。


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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マンガ
べい。
03月08日

思わず読んでみたくなるようなマンガはどんなのか、考えてみるのはどうでしょう。

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べい。さんのラリー・マンガ:思わず読んでみたくなるようなマンガ0
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どうやったら、オリジナリティのある企画を考えられるようになれるのか…?


漫画家はもちろん、企画に関わる多くの人が持つ悩みではないでしょうか。


この問いに対して、佐渡島さんは、型破りなオリジナリティを生み出すためには、定番の型を深く理解することが大切だと言います。


「いきなりゼロから新しいものを生み出そうとしても大抵うまくいかない。そもそも“型破り”というのは、読んで字の如く、型を破ること。型を抑えていない人は、永遠に型は破れない」


物語には、様々な定番の型があります。バディもの(相棒もの)、タイムスリップもの、サスペンスもの、成長もの、ロードムービーもの、ファンタジーもの。


そこで、今月の『企画のおすそ分け』では、「物語設定の定番の型を深く理解する」をテーマに、幾つかの型をピックアップし、それぞれの型への理解を深めていきます。


1週目となる今回は、「型を理解することの大切さ」と、定番の型のひとつである「バディもの」についてお届けします。


***


物語の魅力を大きく左右するものとは?


(以下、佐渡島さん)


今月のテーマは「物語設定の定番の型を深く理解する」です。


僕は新人漫画家を育ているときに、「世の中にある素晴らしいマンガや映画にどんどん触れて、そこから学ぼう」とよく話します。


その際に、特に意識して見て欲しいのは物語設定の型なんです。


設定には幾つか定番の型があります。バディもの、タイムスリップもの、サスペンスもの。様々な作品を見ることで、「今回の物語は、この型を使っているな」と見分けることができるようになります。


同時に、型についての理解を深めていくと、物語の魅力を大きく左右するポイントは、登場するキャラクターやエピソード次第ということもわかってくるはずです。


物語を創作するという長い歴史の中で、「こういう設定にすると、人間の心は動きやすい」という定番の型は既に出来上がっています。新人のうちはベタでもいいから定番の型を使い、キャラクターやエピソードを磨くことに時間をかけたほうがいいと僕は思います。


なぜかというと、キャラクターやエピソードは、他の作品を絶対に真似してはいけない部分だからです。ここを真似すると作品から個性が失われます。自分の体験や過去の感情など、作家の経験の中から生まれたキャラクターこそが、その作家らしいキャラクターになるからです。


定番の型の上に、オリジナリティのあるキャラクターやエピソードを重ねていく。そうすることで、型破りと呼ばれる作品に仕上がっていくのだと思います。


そのために、物語設定の定番の型を深く理解するということは、とても大切なのです。


***


関係をどう深めていくのかは、誰しもが知りたいこと。


(佐渡島さん)


理解を深めたい、ひとつ目の定番の型は「バディもの(相棒もの)」です。


教える側と教えられる側のふたりを中心に物語が進行します。困難に立ち向かう中で、ふたりの関係が時には逆転。そして最後は友情で固く結ばれる。これがよくあるバディもののパターンです。


刑事やスポーツ選手といった職業設定。大きな年齢差や真反対の性格といった条件設定。様々なバディのバリエーションがあり、多くの人に親しまれている物語の型がバディものです。


最初はバラバラだったふたりが、最後はアイコンタクトだけでお互いの意思疎通ができる間柄となる。そんな姿を見て、どこか羨ましいと思ってしまう。おそらく、「心が通じ合える親友が欲しい」ということが、人類共通の欲望なのでしょう。


「相手との関係値をどういう風に深めていくのか?」というのは、常に人間が関心を持つテーマです。バディものという型を使いつつ、ふたりの関係をどういう風に深めていくのかの演出により、作品にオリジナリティが生まれます


例えば、宇宙兄弟はムッタとヒビトのバディものですが、ムッタとケンジのバディの要素も含まれています。


ケンジは、初めて会った相手の年齢を当てるのが得意で、当てた相手と握手をする習慣を持っています。ムッタとも、それがキッカケで仲良くなり、ふたりは会えば必ず握手をするようになります。読者は、はじめは握手に特に意味を感じないと思います。ですが、ふたりの関係にとって最大の困難が訪れるエピソードにおいて、握手がふたりの友情を表す象徴的な意味を帯びるシーンが描かれます。それまでの関係を見てきた読者からすると、心が震える演出だったはずです。


相棒ものというと、似たようなものばかりなのではないかと思う人は、『月刊モーニングtwo』の創刊号を手に入れてみると勉強になるかもしれません。なぜなら、編集長が「創刊号に掲載するマンガは、全てバディものにして欲しい」と、漫画家にお願いしたからです。


その中の作品の一つが、『聖☆おにいさん』です。


作者の中村光さんは、バディものというお題を与えられた中で、キリストとブッダの共同生活という企画を考え出しました。『聖☆おにいさん』を読んで、これがバディものだと気づく人は、なかなかいないかもしれません。


でも、本当に優れたアイデアというのは、完全に型にはまっているのに、それに触れた人が型にはまっているのに気づかない。だから、聖おにいさんは型通りとも言えるし、型破りとも言えると思っています。


クリエイターとして、こういった作品を生み出すことを目指していきたいですよね。


(翌週へ、続く)


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム

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03月06日
なんでモー2はバディものを狙ったのか知りたいですねー^_^
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現在あらゆる仕事において、人をワクワクさせる『企画力』というものが求められています。


この連載では、コルク代表で編集者の佐渡島庸平さんが、長年温めてきたマンガの企画を紹介しながら、ヒットする企画の考え方を同時に伝授していきます。


2月は『他メディア展開から、企画の強度を磨く』をテーマに、企画の磨き方について話をしていきした。


面白いマンガのネタを思いついたとしても、登場人物、舞台設定、展開方法など、企画の味つけとしてアイデアを膨らませない限り、ヒットは生まれません。


最終週の今回は、キャラクターグッズで成功しているキャラクターが持つ3つのポイントから、企画の磨き方を紹介します。


・・・


名前の響きだけで、イメージが伝わるか?


佐渡島:今週は、キャラクターグッズとして成功するために必要なポイントを抑えることの大切さを伝えたいと思います。


初歩的なことから言うと、グッズとして多くの人の手に届くためには、キャラクターの名前の響きがまず重要です。


キティちゃん。ミッキー。リラックマ。ぐでたま。


全て音がいい。その名前を耳にしただけで、キャラクターとしての強さを感じます。


同時に、音を聞いただけで、そのキャラクターの持っている雰囲気が連想できるようにしたいです。


例えば、宇宙兄弟のムッタやヒビト。


ムッタは南波家の長男なのに、六太(ムッタ)です。これは「愛嬌はあるけど、あまりかっこいい奴ではないだろう」という名前を懸命に探した結果生まれました。そして、弟のヒビトはムッタと比べると、シュッとした響きです。


「ムッタとヒビトという音を並べてみた時に、それだけで二人の関係が読者に伝わるようにしたかった」と小山さんは言っています。


キャラクターの名前を考えたら、自分で声にして音を確かめる。そして、周りの人にどんな印象を持ったかを聞いてみる。


まずは、音の響きを徹底的に磨いてみてください。


シルエットとキーカラーが企画の幅を左右する。


佐渡島:また、グッズ展開において、シルエットのデザインが大事だと僕は考えています。


ミッキー。キティちゃん。ドラえもん。コナン。ドラゴンボール。


これらのキャラクターは、そのシルエットを見ただけで、キャラクターを認識できます。


円が三つ重なる形を見た瞬間に、誰が見てもミッキーだと認識できてます。空を眺めてる時ですら、その形の雲をみると、「あの雲、ミッキーに似てるなぁ」と思いますよね。


シルエットが強くなると、グッズ展開の幅が一気に広がります。デザインが圧倒的にしやすくなるからです。


例えば、Tシャツを作るにしても、漫画家が描いている絵をそのまま使うとなると、デザインに制約が生まれます。どうしても、絵の主張が強くなってしまう。一方、シルエットだけでキャラクターが伝わるのであれば、クールな表現、シンプルな表現など、様々なアレンジが可能となります。


リアリティ寄りの作品だと少し難しいかもしれませんが、それでも、宇宙兄弟ではムッタとヒビトの二人が揃っていればシルエットだけで伝わるデザインにしています。


そして、シルエットのデザインを磨いたら、作品のキーカラーも考えてみてください。


紫と白と緑といえば、エヴァンゲリオン。

オレンジと黒と赤といえば、ドラゴンボール。

青、赤、白といえば、ドラえもん。


強い作品は、色の組み合わせを見ただけで、作品が伝わります。


以前、エヴァンゲリオンの新幹線がありましたが、この企画は色の力が強いから成立しているわけです。このようにキーカラーで作品を伝えることができると、様々な企画が可能になります。


シルエットとキーカラー。


キャラクターをデザインする際には、この2つを意識してみてください。このデザインの差が、グッズ展開における企画の幅を大きく左右するはずです。


・・・


さいごに:真のクリエーターになるために。


佐渡島:今月は『他メディア展開から、企画の強度を磨く』をテーマに、企画の磨き方について話をしましたが、最後に大切なことを伝えたいと思います。


それは、他メディア展開について考るなかで、自分が向き合っているメディアでしかできない表現とは何かを考えて欲しいと言うことです。


真のクリエーターとは、自分が表現の場として選んでいるメディアのことを、誰よりも深く理解している人なのではないかと僕は考えています。


漫画家であれば、他のメディアのことも全てわかった上で、「じゃあ、マンガにしかできない表現とは何か?」という問いに対する自分の答えを持っている人こそ、マンガ文化を先に進めることができるだろうし、圧倒的な支持を得るでしょう。


そのメディアにしかできない表現への答えは多種多様であってもいい。ただ、クリエーターであれば、きちんと自分の言葉で語れるようになって欲しい。


だから、クリエーターを目指している人であれば、ある作品が他メディア展開をされていたら、全部を見比べて、それぞれのメディアごとの特徴を考えることが、勉強としてすごく重要だと思います。


自分が向き合っているメディアでしかできない表現とは何か?


その答えを見つけて、イノベーションを生む作品を世の中に送りだして欲しいと思います。


聞き手・構成/井手桂司 @kei4ide &コルクラボライターチーム。

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