シャープさん

SHARP_JP

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2018年11月06日 更新

第1回連動企画 #自分で初めて買った家電

イベント

<お題ページ>https://corkbooks.com/stories/?id=73<寸評ページ>https://corkbooks.com/docs/awards/sharp01

2018年11月06日 更新

第2回連動企画 #家電のトリセツマンガ

イベント

2018年9月19日(水)〜9月25日(火)に実施しました。<お題ページ>https://corkbooks.com/stories/?id=87<寸評ページ>https://corkbooks.co...

3日前 更新
(全24話)

毎週木曜更新予定の寸評連載です。

コラム
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私事ながら、この文章は祖母の葬儀の翌日に書いている。遠方に暮らしていたということもあって、大人になってからの私は、ひんぱんに祖母へ顔を見せるような、殊勝な孫ではありませんでした。その点について、きのうからずっと頭の中で詫びの言葉を繰り返している。


一般におばあちゃん、あるいはおじいちゃんと孫といえば、「なんでこんなにかわいいのかよ」という歌があるように、溺愛という言葉がぴったりの、ほほえましい関係が想像されるでしょう。彼女にとっては初孫だったこともあって、例外なく私も、目に入れても痛くないという溺愛を受けたようだ。


もちろん幼い頃の記憶はしばしば書き換えられるし、いともかんたんに忘れてしまう。私も遠い昔の溺愛された記憶は、悲しいくらいディティールをとどめないけど、大人になるとその分、ぼんやりとした思い出の輪郭や手触りが、自分にとってどういう意味だったのか、よくわかるようになる。


私にとって、祖母からの溺愛は「お前はここにいてもよい」という怒涛の承認だった。右も左もわからず世界に放り出された私が、親以外の存在に肯定されること。家とは別の場所で、自分の居場所を与えてもらうこと。そのはじめての経験が祖母からの溺愛だったのではないかと、あれからずいぶん年をくった孫はようやく理解できる。少なくとも私は、その溺愛(されたという手触り)がなければ、ここまで生きるのにもっとずっと、しんどさがつきまとっただろう。


そういうことを、祖母の美しい遺影(文字どおり私の祖母はけっこう美人だった)に手を合わせながら、言い訳がましく思ったのでした。


変わらないもの(ボブっ子ボブ 著)



そんな私が、いささか不謹慎な言い方だけど、タイムリーに出会ったのがこの作品です。祖母と孫のお話。自由に出かけることがかなわなくなった老いた祖母に、グーグルマップを見せる孫。見せているのはたぶん祖母が生まれ育った土地でしょう。だが期せずして、グーグルマップは祖母の記憶からすっかり変貌した様子を見せてしまう。街並みが変わることはありふれたことかもしれないけど、その変化に並走できない人はいる。時にテクノロジーが残酷さを突きつけてしまう瞬間だ。


だけど孫は、その残酷なテクノロジーを再び使って、変わらない景色を探す。機転を利かせて探し出したのは、その土地の神社だった。祖母の記憶と寸分変わらない場所は、祖母がかつて諦めた記憶をしまいこんでいた場所でもあって、モニター越しの神社はもう会えない人の存在を引き出してしまう。


「もう二度と会えんかと思っとった」人とは、おそらく死者だ。だけど祖母にとって、もう二度と会えないと諦めていた理由は、その人が死んだからではない。その人がいた場所へ、自分が赴くことができなくなったからだ。だから、モニター越しに機械的に映された、諦めた時から変わらない場所を見た瞬間、その諦めは容易に解凍される。


月並みな言い方かもしれないけど、死んだ人はだれかの記憶の中で生き続ける。しかしその記憶さえ、不変ではない。だからこそ私たちは死者の記憶を、確かにそこにあり続けそうな場所やモノに結びつけるのかもしれない。私にとってのそれは、母の実家へいたる急な坂道だ。これからあの坂は、私が私の祖母を思い出す場所になる。


自分の記憶のうつろいやすさを棚に上げ、はなはだ都合のいいことだと思うけど、どうかあの坂道は変わることなく、あの場所にあってほしい。孫は勝手ながらそう願うのです。おばあちゃん、また会いましょう。


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コラム
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シャープのツイッター @SHARP_JP です。ツイッターIDの横っちょに青いマークが付いているから、どうやら私は公式アカウントなんだと思います。今回はマンガの寸評ではなく逸脱編として、先日たらればさんと浅生鴨さんと私で「SNS公式アカウントってなんなん?」ということを、人前でお話した夜を振り返ろうと思います。

たらればさんが司会、浅生鴨さんと私が質問にとつとつと思うところを語るというかたちで進行したイベント内容は、(ほぼ)全文書き起こしというかたちで、公開がはじまっています。

https://corkbooks.com/users/tarareba722

またあの日は、マンガ家さんも会場に聴衆として集まってくださり、会場のやりとりをマンガ化して記録するという、実にネットのトキワ荘たるコルクBooksらしい試みも行われました。その時に描かれたマンガはこちらにまとまっています(なぜか打ち上げの席でした私のカレー話もあるけど)。

https://corkbooks.com/stories/?id=114

われわれの話が、マンガ家さんごとの視点や問題意識でエディットされ、絵として記録されている。あらためて読むとスラスラと頭に入ってきて、マンガが記録をいかにわかりやすく、だれかに伝えることを助けるのか、痛感させられます。ちまちました文字と見えない力関係を配慮する、議事録係を押し付けられがちな会社員の方なら、マンガの記録力に無限の可能性を感じるかもしれません。もう会議の議事録とか、マンガでよくない?

それはさておき、SNS公式アカウントNightの様子です。たとえば、うえはらけいたさんによるこちらのマンガ記録。


SNSマッチョ達による夜会(うえはらけいた 著)

多分にデフォルメされたわれわれの姿もおもしろいですが、そもそも企業がSNSをやる意味を、「モノを売る」とか「メディアを作る」といった常識から離れ、いやむしろ、そのような常識に批評的な立場から考えていたことがよく解説されています。

つまりマーケティングとかプロモーション、宣伝広告といった、いかに多くの人に仕掛け、エサを撒き、売上げを回収するかという、企業活動としてはごくありふれた行為とは真逆の行動を目指したということ。それを浅生鴨さんは「NHKの友達を作る」といい、私は「買ってない人でなく、もう買った人と仲よくする」と表現しました。

ところでここを読むみなさんは、企業の公式ツイッターを運営するとか、マーケティングと名のつく仕事とは、あまり関係のない方が大半だと思います。ですが一般論として、企業には「消費者にモノを売る」という一連の活動があり、その活動の中ではターゲットとか、キャンペーン、ストラテジーといった言葉が使われていることを、なんとなくご存知じゃないでしょうか。

「この新製品は30代独身男性をターゲットに」とか「年末のキャンペーンは総力をあげて」「この広告は若者を分析したストラテジーに基づき」といった物言いを見たり聞いたりしたことがあると思います。実際に私の職場でも、そのような言葉が飛び交い、そのような思考で仕事が進む。

ですが、ターゲット、キャンペーン、ストラテジーといった言葉は、もともと戦争用語であることは、あまり知られていません。ふだん仕事で使っている人でも、知らないことが多いかも。だから先ほどの例も元来の戦争用語に置き換えれば「この新製品は30代独身男性を攻撃目標に」とか「年末の軍事行動は総力をあげて」「この広告は若者を分析した戦略に基づき」と、とたんに物騒なことになる。

あまり言いたくはないけど、マーケティングや広告は、本来的に「狩猟」です。企業は常にあの手この手で人間を狩ろうとするわけで(実際はお客さんの財布あるいは時間を狩るわけですけど)、私も長らく狩りをすることを求められ、実際に攻撃的なことを考えながら仕事をしてきました。

けれど私は、狩猟に向いてない人間だったことにいつしか気付くのです。だれだって、自分が「狩られる」対象として狙われることを快く思う人はいない。だからそもそも、マーケティングや広告が快く思われる余地はもう、ない。一方で「狩る」側の行為にも暴力を感じてしまい、できればそれに加担したくない自分がいる(暴力性があるからこそ逆に興奮するタイプの人もいる)。私がプレデターなら、人間を狩ることに躊躇しないと思うけど、あいにく私は人間だ。人間が人間を狩ることに、私は後ろめたさを感じる。

そのような板挟みに悩んでいた時に出会ったのがSNSでした。実際はやれと言われてはじめたんだけど。だけどやっと私は、個人が個人のままフラットに言葉を交わすツイッターを前にした時、ある種のやましさから解放される予感がしたことを覚えている。

ようやく狩猟をやめられるかもしれないという予感を胸に、私はそれからずっと、狩らないマーケティングをツイッター上で模索してきた。ツイートがゆるいと称されるのも、宣伝する気がないと評されるのも、私にはやりたくないことがあったからこそ、選んでやってきたことだった。

だからあの日、浅生鴨さんが会場からの質問に答えるかたちで「SNSは農業だよ」と発言した時、私は私で衝撃を受けたのです。同時に「そう、そうなんだよ」と深い頷きを繰り返していた。綿密な打ち合わせもなくはじまったイベントが、期せずして最後、私がSNS公式アカウントで追求してきた「狩らない」「暴力がない」「戦争しない」コミュニケーションに、「農業」という名前が与えられ、深く安堵したのだ。勇気づけられたのだ。

SNSは農業。

企業であれ個人であれ、なにかを発信する人にとって、これほど着実な未来へ、希望が持てる言葉もないと思う。そろそろみんな、落ち着いて言葉を交わし、モノやコトの消費を考えようよ。私もツイッターで、気長に宣伝するから。

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コラム
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みんな呟いてる? @SHARP_JP です。口から音が出る病気、と星野源は素敵に歌ったけど、実際のところモノローグ、いわゆる独り言は、口から音を出してしまえば、往々にして周囲から「ヤバい」認定を受けてしまいます。だからみんな、ひと知れず脳内でぶつぶつ呟いてきたはずですが、ツイッターの登場で人類の独り言は新たなステージに突入したように思うのです。


私たちはツイッターを自分の半脳内として解釈することで、独り言を文字で発するようになった。音で出すとヤバい独り言も短いテキストなら、実存をぎりぎり確保できる。それは独り言がいくばくかの社会性を獲得したと言えるかもしれなくて、もし世界の独り言の総量を計測できるなら、ここ10年の独り言増加率は、人類の有史以来、最大であるにちがいない。


もちろんツイッターでは、脳内にうずまく生の状態の言葉がそのまま吐き出されるわけでもなく(それをしてしまうとさすがにツイッターでもヤバい)、みんなある程度の脳内推敲が行われた上で、ツイートボタンをタップしているはず。


当たり前ですが、何人たりとも私の脳内を覗くことはできません。従来の脳内の独り言は、聴衆は自分だけという環境が保証されてこそ語りはじめられるものでした。しかしツイッターの独り言は、フォロワー0の鍵アカでもない限り、自分以外に聴衆がいることを了解しつつ、とつとつと語られている。


そう考えると、独り言のヤバいヤバくないは、オーディエンスの数というより、その場所の親密さが鍵なのかもしれない。自分の脳内は自分にとって最も親密な場所だし、フォロワーの存在がほのかに感じられるツイッターも、いまとなっては相当親密な場所だ。


ところで独り言は、いつも自分へ語りかけられるとはかぎらない。自分に向けて語ることもあれば、自分でないだれかにそっと語ることもある。独り言は親密な場所でなされるからこそ、親密なだれかに向けて、問わず語りされる。それならば私たちはいったいいつ、だれに、独り言を語りたくなるのだろう。


たぶん、独り言が切実に必要とされるのは、もうここにいない人の存在に思いを馳せる時ではないか。もうここにいない人とはつまり、死者か、過去の自分へ、なにか言うべきことがある時に、私たちは独り言というやり方で言葉を紡ぐのかもしれない。



母子家庭で育ったダメ息子から、オカンへ(ひびのし 著)


最初から最後までモノローグが続く作品です。母親にむけて、自分の近況が静かに語られていく中、なぜ独り言なのか、その理由が明らかになる。母親はもうここにいないのだ。


母親との思い出を回想するかたちでモノローグは続く。回想はやがて食事の思い出に移り、さまざまな場面で母親の手によるご飯が列挙されたところで、主人公の後悔と涙が大写しになる。こぼれる涙の先は手紙。母親への独り言は、届くことのない手紙だった。


独り言は元来、出すことのない手紙なのでしょう。そういえば手紙の言葉は、いつもどこか内省的で、親密だ。死者でも、過去の自分でも、もうここにいない相手へ呟く言葉は、そこに後悔があるとしても、いつだってやさしい。


ちなみにこのマンガは、#働いて良かった話 というお題の大賞作品です。こういう作品を拝見すると、コルクBooksというコミュニティは、優れたテーマを投げかける場所であり、いい評価を生み出す場所だと時おり思います。もしあなたが、だれかに語りかけたい独り言を抱えているなら、マンガというかたちでコルクBooksから手紙を出してみるのもいいかもしれませんよ。

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